訪問時にめまいを訴えられた方がいました。

血圧も安定しており、念のため耳鼻科受診を促したところ、原因が耳にあるとの診断を受けられたようです。

今回は「耳の病気が原因かも?めまいと関連する耳の疾患について」というテーマで、めまいの原因として多い耳の疾患とその仕組み、具体的な病名、対処法、高齢者との関係について解説します。

めまいのメカニズムとは?耳との関係性に注目

めまいはなぜ起こるのか?基本的な仕組み

めまいは、内耳だけでなく脳や視覚、筋肉・関節からの情報異常でも発生します

人の体は、視覚・内耳の平衡感覚・筋肉や関節の感覚からの情報を脳で統合し、体のバランスを保っています。
その中でも特に内耳にある三半規管や耳石器は、頭や体の動きを感知し、姿勢を保つ重要な役割を果たします。

この機能がうまく働かない場合、脳は誤った情報を受け取り、めまいとして感じるのです。

たとえば、船酔いや車酔いは視覚情報と内耳からの平衡感覚情報が脳で統合される際にズレが生じることが原因で発生します。

また、病気や炎症などで内耳の機能が低下した場合、急に体が回っているような感覚になる「回転性めまい」が起こることもあります。

つまり、めまいは情報のズレや誤認が原因で生じるため、その中でも内耳が大きなカギを握っているのです。

内耳の役割とバランス機能の関係

内耳は、体のバランス感覚を維持するために非常に重要な器官です。
内耳には、回転運動を感知する三半規管と、重力や直線的な動きを感知する耳石器があります。

これらの器官は、常に頭の動きや体の位置を感知し、脳に信号を送っています。

内耳の情報がなければ、体の動きに対する正確な認識ができず、平衡感覚を失ってしまいます。

たとえば、内耳の一部に異常があると、頭を動かしたときに実際とは違う方向に動いているように感じることがあります。

これが「回転性めまい」の主な原因の一つであり、立っていられないほどのめまいを引き起こします。

このように、内耳はバランス感覚を司る中心的な機能を持っており、その異常はめまいの大きな原因となります。

耳が原因のめまいが多い理由

耳が原因となるめまいは非常に多いと言われています。

内耳は非常に繊細な構造をしており、炎症・感染・結晶の移動など、ちょっとした異常でもめまいが発生しやすい場所です。

また、耳の疾患は外見からわかりにくく、初期には気づきにくいという点でも注意が必要です。

例えば、寝返りを打ったときや頭を動かしたときにめまいが起こる「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」は、耳石という小さなカルシウムの粒が本来の場所からずれてしまうことで発生します

このように、物理的にわずかなズレでも症状が現れるため、耳が原因のめまいは非常に頻度が高いのです。

耳の構造的な繊細さと平衡感覚との深い関係性から、めまいの多くが耳に由来することが分かっています。

耳の病気が引き起こす代表的なめまいとは?

良性発作性頭位めまい症(BPPV)とは

良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、耳の中の耳石が原因で起こる最も一般的なめまいです。

BPPVは、内耳の耳石器から剥がれた耳石が三半規管内に入り込むことで、頭の動きに対して誤った信号が脳に送られ、強いめまいが発生します。

特に、寝返りや起き上がりなど、特定の頭位変化によって症状が現れやすいのが特徴です。

耳石器から剥離した耳石は加齢や頭部外傷などによって生じることがあるとされています。

たとえば、朝ベッドから起き上がるときや、下を向いたり振り向いたりした瞬間に、周囲がぐるぐる回るような感覚に襲われることがあります。

このめまいは数十秒程度でおさまることが多いですが、繰り返し起こることで日常生活に大きな支障をきたします。

BPPVは耳石の位置異常によって起こるため、耳鼻科での治療や理学療法で症状の改善が期待できます。

治療法としては、耳石を元の位置に戻すための頭位治療(例:Epley法)が効果的で、多くの場合、症状は改善するようです。

メニエール病の特徴と注意点

メニエール病は、内耳にリンパ液が過剰にたまることで発症する慢性的な疾患で、めまいと難聴を繰り返すのが特徴です。

この病気は内リンパ水腫と呼ばれる状態によって、平衡感覚や聴覚をつかさどる内耳の働きが一時的に乱れることで発症します。

症状には強い回転性のめまい、耳鳴り、耳の閉塞感、聴力の低下があり、発作的に起こるのが特徴です。

発症原因としてストレスや疲労も関与している可能性もあります。

患者は突然、周囲が激しく回るようなめまいに襲われ、数十分から数時間持続することがあります。

また、症状が治まった後も耳鳴りや聴力の低下が残るケースも多く、再発を繰り返す傾向にあります。

メニエール病は、生活習慣の見直しやストレス管理、薬物療法(例:抗めまい薬、循環改善薬)が治療によるコントロールが必要であり、早期の診断と治療が症状の進行を防ぐカギとなるでしょう。

前庭神経炎や突発性難聴とめまい

前庭神経炎や突発性難聴も、耳が原因のめまいとして知られており、急激な症状を伴います。

前庭神経炎はウイルス感染が原因とされ、内耳から脳へバランス情報を伝える前庭神経が炎症を起こすことで、激しいめまいを引き起こします。

突発性難聴は原因不明ながら、突然の聴力低下とともにめまいを伴うことが多く、早急な治療が必要です。
前庭神経炎の場合、めまいが数日間続き、歩行が困難になることもあります

突発性難聴では、朝起きたときに片耳が聞こえなくなり、めまいが併発することもあり、ステロイド治療など早期介入が重要で、放置すると回復が難しくなります。

突発性難聴では早期診断・治療(48時間以内)が予後改善に重要といえるでしょう。

いずれも耳の機能に急激な障害が生じることから、異変を感じたらすぐに耳鼻科を受診することが重要でしょう。

耳が原因のめまいの見分け方と対処法

症状の特徴から見分ける方法

耳が原因のめまいは、特定の動作や耳の症状とセットで現れることが多く、見分けるための手がかりになります。

耳由来のめまいは、「回転性」「頭を動かしたときに起こる」「耳鳴りや難聴を伴う」などの特徴があります。

逆に、脳梗塞や心因性のめまいは、意識障害や手足のしびれなど他の症状を伴うことが多く、区別するための判断材料になります。

たとえば、寝返りで起こるめまいはBPPVが疑われますし、めまいとともに耳が詰まるような感じや耳鳴りがある場合はメニエール病の可能性があります。

こうした「めまい+耳の症状」がある場合、耳鼻科的疾患を疑うべきです。

ただし、手足のしびれや意識障害など神経症状を伴う場合は早急に脳神経外科を受診する必要があるといえます。

症状の出方やタイミング、伴う耳の不調に注目することで、耳が原因かどうかをある程度見極めることが可能です。

受診すべき診療科と検査内容

めまいを感じた場合、まずは耳鼻咽喉科の受診を検討し、必要に応じて脳神経外科も視野に入れましょう。
耳由来のめまいは耳鼻科での診断が有効です。

診察では、聴力検査、平衡機能検査、眼振の確認などが行われます。

めまいの背景に中枢性疾患(脳梗塞や腫瘍など)が疑われる場合には、MRIやCTなどの画像検査も必要になります。

BPPVの診断では「ディキス・ハルパイク法」という頭の動きによって眼振を確認する検査が行われ、メニエール病では聴力検査と聴覚誘発反応などが活用されます。

症状によっては、神経内科や脳神経外科での精密検査が必要なこともあります。

自己判断は禁物であり、耳鼻咽喉科を起点に、必要に応じて他科との連携も行うことが重要となります。

日常生活でできる対処法と再発予防策

耳由来のめまいには、生活習慣の改善や簡単な体操によって再発を防ぐことが可能です。
めまいの発症には、睡眠不足、ストレス、姿勢の偏りなども関係します。

また、BPPVには「浮遊耳石置換法」という自宅でできる体操(エプリー法)も効果的です。

メニエール病の場合、塩分の摂取制限や十分な睡眠確保などの規則正しい生活が予防につながります。
また、メニエール病では水分摂取量にも注意するようにしましょう。

朝起きる前にゆっくり頭を動かす習慣や、過労を避ける、適度な運動を心がけるなども再発予防につながります。

BPPVであれば医師の指導のもと、自宅での頭位変換体操を継続的に行うことで、改善が期待できます。

生活の中でのちょっとした工夫が、耳性めまいの頻度を減らし、安定した日常生活を送るための鍵になります。

高齢者における耳の疾患とめまいの関係

加齢による内耳の変化とは

高齢になると内耳の機能が自然に低下し、それがめまいの原因となることがあります。

内耳は非常に繊細な器官であり、加齢により耳石器のカルシウム結晶が減少し、三半規管や耳石器の働きが弱まることがあります。

その結果、バランス感覚が鈍くなり、少しの刺激でもめまいを感じやすくなります。 

また、神経の伝達速度も低下するため、ふらつきや立ちくらみが起こりやすくなり、加齢による血流低下も内耳機能障害の一因となるでしょう。

加齢による内耳の機能低下は、自然な生理的変化ですが、日常生活に支障をきたす可能性があるため、適切な対処が必要となります。

高齢者に多い耳の病気とそのケア方法

高齢者に多い耳の疾患には、BPPVや加齢性難聴があり、定期的なケアが必要です。

高齢になると耳石のずれや内耳の老化が進みやすくなり、BPPVが起こりやすくなります。

また、加齢性難聴は内耳の感覚細胞の減少により起こるため、聴力低下とともにバランス感覚にも悪影響を及ぼすことがあります。
定期的な耳鼻科での検診により、BPPVの早期発見が可能です。

また、補聴器の適切な使用や、バランス訓練を取り入れることで、生活の質を保つことができます。食事や水分の摂取、十分な睡眠も耳の健康を保つためには不可欠でしょう。

高齢者特有の耳の病気には早期発見と継続的なケアが有効で、QOL(生活の質)の向上に大きく寄与します。

介護する側が知っておくべきポイント

介護者は、高齢者のめまいが耳の病気に由来する可能性を理解し、適切な対応をとることが重要です。
高齢者は自身の症状を正確に伝えることが難しい場合があります。

そのため、「ふらつき」や「立ちくらみ」の裏に耳の病気が隠れている可能性を見落としがちです。また、転倒リスクが高まるため、早期の受診や生活環境の見直しが必要です。

認知機能低下によるバランス障害も考慮して、手すりの設置や立ち上がり動作のサポート、定期的な様子観察などが安全管理につながります。

介護者が耳性めまいの特徴を理解し、早めの対応をすることで、高齢者の転倒予防と生活の安定に大きく貢献できるでしょう。

まとめ

めまいは多くの方が一度は経験する症状ですが、その原因が「耳」にあることは意外と知られていません。

特に内耳は、私たちのバランスを保つうえで非常に重要な役割を果たしており、その機能に異常が生じると、回転性のめまいやふらつきなどが発生します。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病、前庭神経炎など、耳に関係する病気はめまいを引き起こす主な原因の一つです。

症状の特徴を理解し、早めに耳鼻科を受診することで、正確な診断と適切な治療を受けることができます。
また、高齢者では内耳の機能が自然に低下することで、日常的にめまいを感じる機会が増える傾向があります。

介護者としては、こうした背景を理解し、環境の整備や日常生活のサポートを行うことが大切といえます。

耳が原因のめまいは、早期発見と対応により改善できるケースも多いため、日頃から体調や動きの変化に注意を払い、必要に応じて医療機。関を活用することで、安心・安全な生活につなげていきましょう

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