認知症の家族を介護する際、「物盗られ妄想」は避けて通れない課題の一つです。
これは、本人が大切な物を「盗まれた」と強く信じ込む症状で、家族や介護者にとって大きな負担となります。
物盗られ妄想の原因と適切な対応方法について解説します。
物盗られ妄想とは
症状の概要
物盗られ妄想とは、認知症の周辺症状の一つで、本人が実際には失くしていない物を「誰かに盗まれた」と思い込む状態を指します。
特にアルツハイマー型認知症の初期に多く見られ、財布や通帳などの貴重品が対象となることが一般的です。
発症のメカニズム
この妄想は、記憶障害や思考力の低下が主な原因とされています。
自分が物をどこに置いたかを忘れてしまい、その結果「盗まれた」と感じてしまうのです。
また、環境の変化や孤独感、不安感などの心理的要因も影響を及ぼすと考えられています。
物盗られ妄想の原因
記憶障害との関連
認知症の中核症状である記憶障害により、物を置いた場所やしまった事実自体を忘れてしまいます。
その結果、物が見当たらないと「誰かに盗まれた」と思い込むことがあります。
心理的・環境的要因
孤独感や環境の変化、不安感などの心理的要因も物盗られ妄想を引き起こす要因となります。
特に、身近な人が犯人と疑われるケースが多く、家族や介護者がその対象となりやすいと報告されています。
家族が取るべき対応策
冷静に話を聞く
まず、本人の訴えを否定せず、冷静に耳を傾けましょう。
否定や反論は逆効果となり、症状を悪化させる可能性があります。
共感の姿勢を持ち、「それは大変でしたね」といった言葉で安心感を与えることが重要です。
一緒に探す姿勢を見せる
「一緒に探しましょう」と声をかけ、実際に探す行動を取ることで、本人の不安を和らげることができます。
もし見つからない場合でも、「後でまた探してみましょう」と伝え、気持ちを落ち着かせるよう努めましょう。
環境の整備と予防策
物の定位置を決め、ラベルを貼るなどして視覚的に分かりやすくすることで、物忘れや妄想の発生を減らすことが期待できます。
また、孤独感を感じさせないよう、日頃からコミュニケーションを心がけることも予防につながります。
物盗られ妄想は、認知症の進行とともに現れる可能性のある症状です。
家族としては、冷静かつ適切な対応を心がけ、本人の不安を和らげることが大切です。
困ったときは専門家や地域の支援機関に相談し、適切なサポートを受けるようにしましょう。
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