家では小さな弟やおばあちゃんの世話をして、学校では勉強や部活、友達付き合い……。
そんな毎日を送る中で「なんで私だけこんなに大変なの?」と感じていませんか?
もしかしたら、あなたは“ヤングケアラー”かもしれません。
ヤングケアラーとは、家族の世話や介護を日常的に担う子どもや若者のことを指します。
この問題は、決して特別な話ではなく、高校生の中にも実は多くの当事者がいます。
この記事では、ヤングケアラーという存在を知ってもらい、あなた自身や周囲の人の悩みや不安を少しでも軽くできるように、以下のことをお伝えします。
読み終わるころには、「自分だけじゃない」「動けば助けがある」と少しでも心が軽くなるはずです。
あなたやあなたの大切な人が、一歩前に進むためのきっかけになりますように…。
ヤングケアラーってなに?高校生にも関係あるの?
身近にいるかもしれない“もう一つの役割”
ヤングケアラーの定義と高校生の割合
ヤングケアラーとは、病気や障がいをもつ家族、あるいは高齢の家族の世話を、日常的に行っている18歳未満の子どもや若者のことをいいます。
つまり、まだ子どもや学生であるにもかかわらず、家庭の中で「ケア(世話)」という大人が担うべき役割を引き受けている人たちのことです。
では、どれくらいの高校生がヤングケアラーに該当しているのでしょうか?
高校2年生を対象とした調査では、約4.1%が「家族の世話を日常的にしている」と回答しているようです。
これは、クラスに1人か2人いる計算になります。
多くの場合、周囲の人や学校の先生がヤングケアラーであることに気づいていないケースが多いのが現状です。
それだけに本人も「自分がヤングケアラーだ」と自覚していないことも珍しくありません。
ヤングケアラーは特別な存在ではなく、誰の身近にもいる可能性があるのです。
ヤングケアラーは家庭内で家族のケアを担う未成年者であり、高校生の中にも一定の割合で存在しています。
これは他人事ではなく、私たちのクラスメイトや友人、もしかしたら自分自身のことかもしれないのです。
どんなケアをしているの?実際の生活例
ヤングケアラーがどんな生活をしているのでしょうか。
まず代表的なケアの内容は次のようなものです。
■ 家庭内での家事全般
・朝早く起きて家族の朝ごはんを作る
・掃除や洗濯を一人でこなす
・夕飯も自分で作って配膳し、片づけもする
■ 高齢の祖父母や障がいを持つ家族の介護
・お風呂やトイレの介助
・薬の管理、飲み忘れの確認
・通院の付き添い
・認知症の家族を見守る、会話を繰り返す
■ 幼いきょうだいの世話
・保育園や学校の送り迎え
・宿題を見てあげる
・遊び相手になる
・夜泣きの対応
このように、ヤングケアラーが行っているケアは多岐にわたり、内容も責任の重いものが多く含まれます。
学校生活と両立するのが難しいと感じているケースも少なくありません。
重要なのは、「子どもだから大丈夫」「しっかりしているから任せてもいい」と思われがちな環境の中で、本人の心や体の負担が見過ごされてしまうことです。
ヤングケアラーが行うケアは家事や介護、育児など多岐にわたり、責任も大きいものです。
そのような生活をしている高校生は、身近な存在として私たちの周りにも存在している可能性があるということを、もっと社会全体で理解しなければなりません。
なぜ問題なの?学業・進路・心の不安
学校生活との両立がむずかしい
ヤングケアラーにとって、家族の世話と学校生活の両立はとても難しい現実です。
特に高校生は、進学や将来の選択に関わる大事な時期でもあるため、「自分の人生をどうしたいか」と考える余裕がないまま日々を過ごしてしまうこともあります。
福岡県が実施した「令和4年度『ヤングケアラー』に関する調査結果」によると、以下のような問題が浮き彫りになりました。
以下のような影響が報告されています。
問題点 | 内容 |
遅刻・欠席の増加 | 朝早く起きて家族の世話をするため、登校が遅れることがある |
勉強時間の減少 | 帰宅後に家事や介護をしているため、宿題や復習ができない |
授業中の集中力の低下 | 体が疲れていたり、悩みごとで気が散ることが多い |
進学のあきらめ | 自分が家にいないと家庭がまわらないため、進学を断念する |
この問題を解決するためには、学校側の理解や柔軟な対応、家庭への支援制度の充実、そして何よりも「話せる場所」が必要です。
周囲の大人や先生が、こうした背景に目を向けてサポートすることが大切です。
メンタルヘルスへの影響
ヤングケアラーが抱える負担は、体だけでなく心にも深い影響を与えています。
家族の世話をすることが日常になっていると、一見しっかりして見えるかもしれませんが、心の中ではプレッシャーや孤独感、将来への不安を強く感じていることがあります。
【ヤングケアラーが抱える主な心理的負担】
- 不安(将来や家族の健康への心配)
- ストレス(自分の時間がない、人と遊べない)
- 孤独感(悩みを共有できない)
- 自己否定感(自分がいないとダメと思い込む)
さらに、次のようなリスクが指摘されています。
心の影響 | よくある状態や行動 |
抑うつ | 元気が出ない、食欲がない、朝起きられない |
不眠 | 夜に悩んで眠れず、睡眠不足になる |
怒りやすさ | 小さなことでイライラしてしまう |
学校への不適応 | 不登校やひきこもりに近づく可能性 |
心理的ストレスは、身体的な不調にもつながることがあります。
頭痛や腹痛、胃もたれなどの体のサインが出ている場合、それは心の疲れが原因かもしれません。
【心身の不調の例】
- 学校に行く前になるとお腹が痛くなる
- テスト前になると不安で眠れない
- 友達と話していても心から楽しめない
このような状態が続くと、心の健康だけでなく、学業や人間関係にも悪影響が出てきます。
メンタルヘルスの問題を防ぐためには、周囲の大人が「がんばりすぎていないか」「一人で抱えていないか」を定期的に確認してあげることが大切です。
そして、本人が「助けを求めてもいいんだ」と思える環境づくりが必要です。
専門のスクールカウンセラーや児童福祉の相談員といった専門職に相談することで、具体的な支援を受けられる場合もあります。
たとえ身近に相談できる大人がいなくても、学校や自治体には相談窓口が用意されています。
ヤングケアラーは学業面だけでなく、精神的にも大きな負担を抱えており、その影響は将来にまで及ぶ可能性があります。
そのため、早い段階で周囲の理解と支援、相談体制の整備が必要です。
子どもや若者が「自分のことを大切にしていい」と思える社会にしていくことが重要です。
ヤングケアラーを取り巻く社会のギャップ
「相談できない」「制度がわからない」
周囲が気づきにくい背景とは?
ヤングケアラーの多くは、自分が特別なことをしているという自覚がなく、「家族だから当たり前」と思って過ごしています。
そのため、まわりの大人や友達も気づきにくいという現状があります。
これは、ヤングケアラーの問題を複雑にしている大きな要因のひとつです。
周囲に世話について相談したことがない中高生が6割を超えていたことが報告されているようです。
相談できない主な理由は以下の通りです。
●「家のことを外に話すのが恥ずかしい」
●「話してもどうにもならないと思っている」
●「誰に相談すればいいのかわからない」
●「親に迷惑をかけたくない」
こうした思いから、ヤングケアラーは「自分さえがんばればいい」と一人で問題を抱えがちになります。
また、友達との会話でも家族の話題を避けるようになり、孤立してしまうこともあります。
そのため、「まさかあの子がそんな大変な生活をしているなんて」と驚かれることも少なくありません。
結論として、ヤングケアラーは外からは見えにくく、本人も助けを求めるのが難しい状況に置かれています。
まわりの大人や同世代の仲間が、もっと敏感にサインを感じ取ることが重要です。
支援が届かない理由と課題
ヤングケアラーが抱える問題に対して、日本の行政や教育現場も少しずつ対策を進めています。
しかし、まだまだ十分とは言えず、「支援が届いていない」現実があります。
厚生労働省や文部科学省が連携し、2022年からヤングケアラー支援のモデル事業を一部の自治体で始めています。
また、スクールカウンセラーや児童相談所の職員による早期発見の体制も徐々に整備されています。
しかし、現場では次のような課題が残っています。
【主な課題】
- 支援制度の認知度が低い
- 学校の先生もヤングケアラーについて知らない場合がある
- 相談窓口がどこかわからず、活用されていない
- 自治体によって支援内容に差がある
支援が届きにくい原因の一つに、制度の複雑さもあります。
福祉や教育、医療など関係する部署が分かれており、どこに相談すれば何の支援が受けられるのかが分かりにくいという問題があります。
例えば、次のような支援が存在しますが、知られていないことが多いのです。
支援内容 | 対象 | 実施主体 |
家庭訪問支援 | 重度の介護が必要な家庭 | 市町村の福祉課 |
スクールカウンセラーの面談 | 学校生活に悩みがある生徒 | 教育委員会・学校 |
ヤングケアラー相談窓口 | 家庭の事情で悩む児童・生徒 | 児童相談所やNPO団体 |
こうした支援があるにもかかわらず、情報が届いていなければ、実際には使われないままになってしまいます。
そのためには、まず学校や地域での情報発信が不可欠です。
- 学校便りやホームルームで紹介
- SNSやポスターでの周知
- 生徒からの匿名相談窓口の設置
こうした工夫を通じて、「支援がある」ことを一人でも多くの生徒に伝える必要があります。
結論として、支援制度は徐々に整ってきているものの、現場の認知不足や制度の分かりにくさにより、多くのヤングケアラーが必要なサポートを受けられていない状況です。
これを改善するには、制度の見直しとともに、学校や地域ぐるみでの周知活動が求められています。
じゃあどうすればいい?高校生にできること
もし自分や友達がそうだったら
先生やスクールカウンセラーへの相談先
もし自分や友達がヤングケアラーかもしれないと思ったとき、一番大切なのは「一人で抱えこまないこと」です。
そして、身近にいる大人に話す勇気をもつことが、最初の一歩になります。
その相談相手として、学校の先生やスクールカウンセラーがいます。
話しやすい先生や、保健室の先生でもかまいません。
スクールカウンセラーは、悩みごとを聞くために学校に来ている専門の人なので、どんなことでも安心して話すことができます。
【相談できる人】
- 担任の先生
- 学年主任
- 保健室の先生
- スクールカウンセラー
- 進路指導の先生
もし「親に知られたくない」「秘密にしてほしい」という思いがある場合でも、その気持ちを相談の最初に伝えれば、無理に話が外に出ることはありません。
相談するのに勇気がいるかもしれませんが、自分の気持ちを誰かに話すだけでも、心が軽くなることがあります。
地域や学校の支援制度を知ろう
相談することに加えて、「どんな支援があるのか」を知ることも大切です。
最近では、ヤングケアラーに対応した支援制度やサービスも増えてきています。
【主な支援制度・取り組み】
- 地域包括支援センターによる家庭支援
- 学校と連携するNPOやボランティア団体のサポート
- 自治体の「子ども・家庭支援センター」
- 進学や学費に関する相談窓口
特に最近では、オンラインで相談できるサービスやチャット形式の支援も登場しています。
誰かに直接会わなくても、自分の気持ちを安心して伝えられる仕組みが少しずつ広がってきました。
【おすすめの相談窓口】
- 24時間子どもSOSダイヤル(0120-0-78310)※無料・匿名OK
- チャイルドライン(18歳までの子ども専用電話)
- 自治体の公式サイトや教育委員会のページにある「ヤングケアラー支援」情報
このように、制度や窓口を知っているだけで、選択肢は広がります。
「こういう場所もあるんだ」と知るだけで、少し心が安心するかもしれません。
もし自分や周りの友達がヤングケアラーかもしれないと思ったら、まずは「話す」こと、そして「制度を知る」ことが大切です。
声をあげることは弱さではなく、自分や家族を大切にする強さの表れなのです。
ヤングケアラーは、身近な問題でありながら見えにくく、支援が届きにくい存在です。
本人の努力だけでは限界があり、社会や学校、周囲の理解とサポートが不可欠です。
自分や友達の状況を見直し、できる一歩から始めてみましょう。
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