今回は、ケアマネジャーの本来の役割と、利用者・家族が抱きやすい誤解について解説します。
最近、利用者や家族の7割がケアマネの仕事を誤解しているという調査結果を目にし、正しい理解が支援の質を高めると感じて記事にしました。
ケアマネジャーの基本的な役割とは
ケアプラン作成という中心的な仕事
ケアマネジャーの主な仕事のひとつは、要介護者に合った「ケアプラン(介護サービス計画)」を作成することです。
このプランは、要介護認定を受けた人がどのようなサービスを、どのタイミングで受けるかを明確にする設計図です。
プラン作成の際には、本人や家族の希望、生活環境、心身の状態を踏まえて具体的な支援内容を検討します。
これにより無理のない在宅生活を送れるように調整されます。
たとえば、ひとり暮らしの高齢者に対しては、訪問介護や配食サービスを組み合わせて孤立を防ぐ内容にするなど、細やかな対応が求められます。
このように、ケアマネは「何かをする人」ではなく、「どのようなサービスを組み合わせるかを考える専門家」として機能しています。
介護サービスの調整と管理
ケアプランを作成した後は、それが適切に実施されているかどうかを管理するのもケアマネの役割です。
サービス事業者との連携、スケジュールの調整、変更があった場合の迅速な対応などを行います。
たとえば、デイサービスの曜日が変わったり、急な入院などでプランの修正が必要になったときには、関係機関と連絡を取り合って再調整します。
利用者本人だけでなく、関係者全体を見渡しながら「全体のバランス」を取る調整力が求められる仕事です。
利用者・家族との橋渡し的な役割
ケアマネジャーは、介護サービスと利用者・家族をつなぐ「橋渡し役」でもあります。
介護保険制度は複雑でわかりづらく、不安や疑問を抱える家族も少なくありません。
そうした不安をくみ取り、適切な情報を提供しながら相談に乗るのもケアマネの大切な仕事のひとつです。
実際、「介護保険の申請ってどうすればいいの?」「施設に入りたいときは?」などの質問にも丁寧に対応しています。
こうした支援によって、利用者と家族が安心して介護に向き合える環境が整えられているのです。
なぜ利用者・家族に誤解されやすいのか
「何でもしてくれる人」と思われがち
ケアマネジャーの仕事が誤解される理由のひとつに、「何でもしてくれる人」というイメージがあります。
特に初めて介護に直面した家族にとっては、ケアマネが万能な存在に映ることがあるのです。
実際には、ケアマネは介護の「コーディネーター」であり、現場で身体介護を行う立場ではありません。
しかし、説明が不十分だったり、サービスの内容が不明確だったりすると、「訪問介護もやってくれる」と勘違いされやすいのです。
こうした誤解は、ケアマネ自身が苦しい立場に置かれたり、家族とのトラブルの元になったりします。
説明不足・情報の乏しさが原因
ケアマネの仕事を正しく理解してもらうには、制度や仕組みを丁寧に説明することが不可欠です。
しかし現場では、忙しさから説明が後回しになったり、利用者側も「わからないまま使っている」ことが多くあります。
特に初回の面談やサービス導入時に、基本的な内容をしっかり共有することが大切です。
「どこまでがケアマネの役割なのか」を明確に伝えるだけでも、大きな誤解を防ぐことができます。
現場でありがちな誤解とその実例
例えば、「買い物代行をお願いしたい」「ゴミ出しをしてほしい」といった要望がケアマネに寄せられることがあります。
本来これは訪問介護員や地域支援の範疇ですが、ケアマネが対応してしまうと「やってくれるのが当たり前」という誤解を助長してしまいます。
このような現場の実例は少なくありません。
対応しきれない要求に追われ、ケアマネが本来の仕事に集中できない事態にもつながっています。
誤解を避けるためには、利用者や家族との定期的なコミュニケーションが欠かせません。
ケアマネの仕事を正しく理解するために
家族や利用者ができること
ケアマネの役割を正しく理解し、必要以上の要求をしないことが大切です。
また、不明な点があれば積極的に質問し、誤解を早期に解消する姿勢も求められます。
家族が協力的であることで、よりスムーズな支援体制が築かれます。
他職種との役割の違いを知ろう
介護の現場には、訪問介護員、看護師、福祉用具専門員など多くの職種が関わっています。
それぞれの役割を理解することが、ケアマネへの誤解を防ぐために非常に有効です。
たとえば、「入浴介助」は訪問介護員の役割、「医療的な処置」は訪問看護師の範囲というふうに、明確な区分があります。
誰に何をお願いすべきかが明確になると、介護の質も高まりやすくなります。
信頼関係を築くコミュニケーションの工夫
ケアマネと家族・利用者の間には、信頼関係が重要です。
そのためには、遠慮せずに困っていることや希望を伝えること、逆にケアマネの立場も尊重する姿勢が必要です。
定期的な面談やモニタリングの場を活用し、相互理解を深めていくことで、信頼関係はより強固になります。
まとめ
ケアマネジャーは介護の専門職であり、利用者の暮らしを支えるコーディネーターです。
しかし、その役割が正しく理解されないことで、本来の仕事が見えにくくなっている現状があります。
家族や利用者がケアマネの仕事を正しく知ることで、誤解を防ぎ、より良い介護環境が整っていくでしょう。
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