今回は「ケアプランに系列色が出る理由とその見抜き方」というテーマで、ケアプランに特定法人の意向が反映される背景や、その見分け方、公正なサービス選定のポイントについて解説します。
私自身、現場で系列事業所の偏りに疑問を持つ機会が多く、利用者本位の支援について改めて考える必要があると感じ、この記事を執筆しました。
ケアプランに系列色が出るとはどういうことか
系列色が出るケアプランの特徴
ケアプランに系列色が出るとは、特定の事業所や法人のサービスに偏った内容になっている状態を指します。
このようなプランでは、訪問介護、通所介護、福祉用具などがすべて同一グループの事業所で構成されることが多く見られます。
本来、ケアプランは利用者のニーズや状況に基づいて中立的に作成されるべきですが、系列色が強いと、その選択が事業所都合によるものである可能性が出てきます。
例えば、通所介護を利用している利用者が、ADL(日常生活動作)改善には機能訓練型のデイサービスが適しているにもかかわらず、系列のレクリエーション中心の施設を勧められるといったケースがあります。
このように、系列色が出ると利用者本位の支援から逸脱する危険性があります。
なぜ系列色が出てしまうのか
系列色が出てしまう背景には、法人内での売上確保や事業所間の連携のしやすさといった事情があります。
ケアマネジャーが系列内に所属している場合、法人の方針や上司の意向に逆らいにくく、自然と系列事業所を優先しがちになります。
また、系列内のサービスを使うことで情報共有がスムーズになる、トラブル時の対応が迅速になるなど、業務上の利便性も影響しています。
しかしこれは、ケアマネの役割である「利用者にとって最適なサービスの選定」とは本来相反するものです。
法人全体の経営戦略が個々の利用者の生活を左右しているという点で、大きな課題だと言えるでしょう。
実際の事例で見る系列偏重の影響
ある地域での事例では、要介護2の高齢女性が、通所リハビリテーションを希望していたにもかかわらず、系列のデイサービスしか案内されず、結果的にADLの維持が困難になったというケースがありました。
また、利用者家族が他事業所のサービスを希望して相談したところ、「このままの方が安心です」と説明され、変更を断念せざるを得なかったという報告もあります。
これらの事例からもわかるように、系列色が強いケアプランは、利用者の意向やニーズよりも法人の事情が優先される傾向があることが確認できます。
系列色のケアプランを見抜くポイント
サービス提供事業所の偏りをチェックする
まず注目すべきは、サービスを提供している事業所の構成です。訪問介護、通所介護、訪問看護、福祉用具など、すべてが同じ法人や系列である場合、抱え込みの可能性があると考えられます。
地域には多くの事業所が存在するにもかかわらず、他の選択肢がまったく提示されていない場合は、利用者が本当に適切な選択肢を持てていない可能性があります。
他事業所との比較がない理由を確認する
系列色が強いケアプランでは、他の事業所との比較検討がなされていないケースが多いです。
ケアマネに対して「他に候補はありますか?」と尋ねたときに、明確な回答がない、あるいは「系列が一番安心です」といった曖昧な返答しかない場合は注意が必要です。
本来、ケアプラン作成の過程では、複数のサービス提供事業所を比較検討することが前提とされています。
比較がなされていない場合は、その背景を確認する必要があります。
利用者や家族の希望が反映されているかを見る
ケアプランが利用者の希望に基づいて作成されているかどうかは、系列色を見抜く上で重要なポイントです。
ヒアリング時に「こうしたい」「あれは避けたい」といった具体的な要望があったにもかかわらず、それが反映されていない場合は、ケアマネ側の恣意的な選択が疑われます。
また、家族が別の事業所を提案した際に、理由もなく拒否されるような場合も系列色の強さが現れているサインです。
公正中立なケアプラン作成のためにできること
ケアマネ自身の意識改革と倫理観
最も重要なのは、ケアマネジャー自身が公正中立であるという意識を持ち続けることです。
系列事業所との関係性があっても、常に「利用者にとって最適なサービスとは何か」という視点を持つことが求められます。
ケアマネの行動がそのまま利用者の生活の質に直結することを忘れず、業務の中で倫理観を持った判断ができるよう、日々の研修や振り返りを通じて意識を高める必要があります。
利用者の情報提供の徹底と選択肢提示
利用者や家族に対しては、利用可能な複数のサービスを公平に紹介し、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明することが大切です。
選択肢を提示することで、利用者自身が自らの生活に合ったサービスを選ぶことができ、ケアプランの透明性が向上します。
また、情報提供がしっかりなされることで、利用者の安心感も高まります。
地域包括支援センターや第三者の視点を活用する
公正中立な立場を保つために、第三者の視点を取り入れることも有効です。
地域包括支援センターや他のケアマネと連携し、ケアプランの内容を共有・検討することで、自身では見えなかった偏りに気づくことができます。
定期的なモニタリングや内部監査、外部評価の機会を設けることも、系列色を防ぐ有効な対策となります。
まとめ
ケアプランに系列色が出てしまう背景には、法人の事情や業務の効率性が存在しますが、それが利用者本位の支援を損なうものであってはなりません。
利用者が本当に望む生活を支えるためには、ケアマネ自身の意識と行動が何よりも重要です。
系列事業所に偏らない公正なケアプランの作成こそが、介護の質を高める第一歩となるのです。
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